Viamver® 酵母
Viamver®酵母とは、ヤマモ味噌醤油醸造元さんのお味噌の中から見つかった蔵付き酵母です。酵母菌の属性はZygosaccharomyces rouxii(以下Z.rouxii)。お味噌やお醤油の発酵では代表的な耐塩性酵母のうちのひとつです。
では、Viamver®酵母のどこがそんなに特別なのか。通常「耐塩性酵母」というと、塩のある環境でも活動できる酵母のことを言います。酵母、というと塩の入っていないワインやお酒の中でアルコール発酵を促す酵母菌をイメージする方も
多いかもしれませんが、塩を使うお味噌やお醤油にも、Z.rouxiiのように逆に塩があることによってより活躍できる酵母菌もいるのです。
通常、このZ.rouxiiはお味噌お醤油のような塩の入った発酵に適している酵母なので、お酒の醸造には向かず、ワインの醸造では腐敗菌とされています。ところが、Viamver®酵母は違いました。Viamver®酵母はZ.rouxiiであるにも関わらず、無塩下でも全く弱ることなく発酵を続けることができる菌だと分かったのです。
そもそも、なぜこんな菌がヤマモ醸造の蔵から見つかったのでしょうか?
それは、7代目高橋さんが会社を継いでから、味噌醤油以外での業界で使われる菌を使用したり、他業種の技術応用とセオリーにない特殊実験を重ね続けた末に流れ着いた発見でした。こうしたイレギュラーな研究を重ね続けた10年目、試験
的に造られたお味噌からこの菌は発見されます。これは、ずっと同じ製法だけでお味噌を作り続けていては、出会うことのなかった菌の存在でした。また、菌が新種であったり新たな効能があっても、他者を殺してしまうキラー酵母であった
場合、使用する事はできません。このように有用菌の発見確率は非常に低く、困難なものです。
ここに至るまで、実は実験2年目の段階で高橋さんはお味噌から6%のアルコール生成を達成しています(通常は3%未満)。このことがきっかけで高橋さんは味噌、醤油以外にもこの菌の有用性を感じ、酒類や乳酸菌の専門家にも分析と検証
を依頼、無塩条件にしてみたり、原材料に味噌醤油と関係ない果実や木の実、キノコを使用してみるなど、かなり独自のアプローチで、多角的な検証を行ってきました。
前回の投稿でも書きましたが、「変わらないこと」を求められる味噌醤油業界において、この考え方はかなり突拍子もないものでした。でも、高橋さんは考えたのです。この酵母は、味噌や醤油だけではなく、お酒やワインの発酵醸造などに
も横断的に使えるはずだと。ヤマモ味噌醤油醸造元はこの酵母を最大限に活かした発酵を探求するために、ASTRONOMICA®という研究チームを立ち上げます。(詳しくはこちらを読んでください。)
研究が進むにつれ、この酵母はコハク酸といって魚介類から得られる旨味成分を通常のZ.rouxiiの二倍程度作る特性があることが分かってきました。また、前述の通り無塩での発酵能力と6%程度のアルコール醸造能力があることまでわかり、また、フルーツや吟醸香に似た華やかな芳香を放つこと、肉質改善やマスキング効果まであることまで分かりました。
こんなにたくさんの才能を持った菌の可能性を、活かさないわけにはいかない。高橋さんは、この菌の微生物特許、また高いコハク酸生成の製法特許を出願、そして学会発表、国際商標出願へと踏み切ります。地方の中小企業がここまでしたのは、技術力や発見を客観的に残し、業界にイノベーションを起こし、世界に発酵の新たな価値を日本から広めたい、という高橋さんの明確なビジョンがあってこその決断でした。
この酵母菌はViamver®と名付けられ、研究チームのASTRONOMICA®とともに国際商標登録を出願されます。
以来、ASTRONOMICA®はこの酵母の華やかな香りと旨味を活かし、革新的な味噌醤油だけではなく、ナチュラルワインの醸造、そしてなんと、どぶろく、ビールへの応用を検討するなど、ひとつの酵母からのペアリングを実現するための研究を重ねています。
その研究成果の一部が、今回紹介させて頂くASTRONOMICA®ラベルのお醤油と、塩、そしてホットソースなのです。どうでしょう。感動で手が震えませんか。
今回のASTRONOMICA®ラベルのViamver®製品、ますますどんな味がするのか気になりますね。それはまた、改めてこのMONO MONTHLY期間中にシェアさせて頂きたいと思います。
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